意外と揉めてない?!相続の実際。

2016年1月12日

 

所長徳本です。

最近,相続手続について考えていることをまとめてみたので,

今回から数回の予定で,書いていこうと思います。

司法書士という仕事は,「争いごと」よりも「円満な手続」のご支援することの多い法律家だと思います。

だからこそ,思いついた観点だと思います。

 

意外と揉めてない?相続手続。

高齢化社会と情報化社会の進展の影響からか,ここ最近は,テレビ,新聞報道や雑誌による情報が多くなり,一般の方々も相続・遺言に関する関心も高くなってきたようです。

私の事務所でも,この時代の動きに相応してか,相続や遺言のご相談のお客様も年々増加しており,また,セミナー講師,研修講師のご依頼も多くなっております。

 

テレビ,新聞報道や雑誌を見ていると最近,気になる用語があります。

それは,「争続」という用語。

「相続」ではなく「争続」で,とかく相続手続は,揉めてまとらないもので,家族・親族内で紛争がたくさん起きているから,大変なんですよーという趣旨です。

だから,もめ事にならないように事前にしっかり準備しましょう!というものです。

 

さて,相続って,「争続」と言われるほど,実際に揉めているものなんでしょうか?

 

具体的に検証してみましょう。

具体的に,統計データを基に推計してみましょう。

まずは,母数となる,年間死亡者数ですが,平成24年度統計によりますと,年間死亡者数は,125万6,359人です。

揉めている相続の典型として,家庭裁判所で行われる遺産分割調停事件が,12,697件です。これを単純に計算すると,全体のたった1%程度なんです。

もちろん,家庭裁判所で調停まではしてないけれども,揉めている相続もあるでしょう。

実際に揉めている相続は1%よりはもっと多いと思いますが,仮に10倍だとしても,全体の10%程度ということになりそうです。

逆にいうと,「揉めてない相続」は全体の90%だということですね!

 

ということで,意外と報道で言われているほど,揉めてないものではないでしょうか?

 

ちなみに,最近は,「遺言書」は多くの人が作ってます!というような論調も多いように思いますが,これも同様に意外と少ないという推計ができます。

遺言に基づく相続手続の年間件数については,年間死亡者数に占める遺言による相続手続の正確な数字を算出できるデータはなさそうなので,遺言書の年間作成件数を基にしてみます。

まずは,平成24年度に公証人役場で,作成された公正証書遺言の作成数が,88,156通で,家庭裁判所における自筆証書遺言の開封手続である「遺言書検認手続」が,16,014件。

この合計数で年間死亡者数から計算すると,約8%です。

これも意外と少ないと思いませんか?

 

また,最近よく聞く,「エンディングノート」ですが,エンディングノート作成セミナーを数多くやっておられる葬儀社関係の方に聞いたところ,実際作成する方は,7%程度ではないかということでした。

実際に,相続手続の相談にお見えになったお客様で,エンディングノートをお持ちいただいたことは未だにありません。

 

さて,ではどのように相続手続に臨むのか?

もちろん,「遺言書」があれば,とても相続手続は簡単になります。

実務感覚からいくと,遺言書のある相続手続は,ない場合の10分の1程度の労力で済むように思いますし,エンディングノートがあれば,相続手続の前提となる相続財産調査が簡単になるので,手続完了までの期間が1~2ヶ月は短縮できると思います。

 

ただ,相続手続=「争続」で,揉めるものだから大変なのだという思い込みは不要だということです。

これを読む皆さんは日頃からお客様やお知り合いから,相続について聞かれることが多いと思います。

そのために必要な知識としては,「揉めた場合の相続の対策」を学ぶよりも,より割合の多い「揉めてない相続手続の方法」を学ぶ方が効率的だと言えるのではないでしょうか?

 

次回は,「揉めてない相続手続の方法」について,ご説明したいと思います。